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“音楽理論的に正しい”は正しいのか?

ガバガバ音楽史の番外編として、『”音楽理論的に正しい”は正しいのか?』という記事を書いてみます。
ちょっと説教臭い内容になってしまうかもしれません。
 
不要だな、と思った人は飛ばして頂いて結構です。
また、個人的な意見ですのであくまで参考程度に。


・音楽理論の推移とその範囲



これまでの記事ではルネサンスから20世紀までの音楽とその技術の推移をまとめてきました。

(ガバガバ音楽史シリーズ その1 2 3 4 5 6)


大雑把にですが、20世紀までの"音楽理論"と呼ばれるものの移り変わりとしては、



対位法(ルネサンス)→和声法(古典派)→より複雑な和声法(ロマン派)→無調や12音技法など(現代音楽)


という進化を遂げてきました。


そして20世紀に入り、ジャズの時代になり、クラシックから発展した
現代音楽が12音技法や無調の理論を編み出すのと並行して、
ジャズは古典派に立ち戻り、ロマン派の構造を経て、モードへと至り、やがてフリージャズとなります。


チャートで表すとこんな感じ。



クラシック(古典派)--クラシック(ロマン派)--T----現代音楽(無調、12音技法)
                       |
                        ----ジャズ(古典派)--ジャズ(ロマン派)--ジャズ(モード技法)



このチャートを見るとロマン派の構造からどのように脱却するか?でクラシックでもジャズでも頭を悩ませていることがわかります。
無調・12音技法もモード技法も既存のロマン派構造からの脱却を目的として考案されたものでした。


では、一般的に音楽理論と言われるものはどの範囲を指し示すのか?…お話します。

一般的に習うもの、書籍になっているものの範囲ではロマン派の分野までとなっています。
あるいは、ジャズでの理論分野としてバークリー・メソッドと呼ばれるものが主流となっていますが、
これも大筋ロマン派の分野に留まります。

つまりは、
    一般的に音楽理論と呼ばれているものはほぼロマン派で止まっている
と言えるかと思います。 ・そもそも"音楽理論的に正しい"状態というのは? 前述の考え方でいくのであれば、ロマン派までの考え方的に正しい状態のことを指します。 ①和声に機能をもたせ ②ドミナント・モーションを基本とする ③調性の枠内に収まる音楽 これがロマン派までの音楽の特徴です。 無調や12音技法は調性からの脱却を、モード技法は機能とドミナント・モーションからの脱却というコンセプトで 考案された音楽理論なのですが、理論として語られることは稀…というよりも特殊な専門分野として扱われています。 つまりロマン派的思考からの脱却を図り、より新しい時代を築くため進化した音楽理論なのです。 ですが、残念ながら一般的にはこれらは"音楽理論的に正しい"と認められない傾向にあります。 この他にも、リディアン・クロマチック・コンセプトなんかもそうですね。 それ故にか、それらを修めようとする人は少なく よりマイノリティというか、マニアックというか、「アレな人」扱いというか… 実際、本屋に行って『曲を書くための理論の本』みたいなのを手にとってみてください。 だいたいは、コードの機能はこんなのだよ、使える音と避けるべき音はこれだよ、みたいなことが書かれてるかと。 で、ごく稀に巻末のほうにほんのちょろっとだけモード技法とは?みたいなことが書いてあったり。 ましてや、12音技法についてなんて絶対書かれてないですよね。 このようにロマン派以外の音楽理論は不遇の立場にあります。 ・実際の音楽ではどういう理論が使われているの? ポップスであったり、商業音楽的な…普段自分たちの耳にしているポピュラーな音楽の分野では特に ロマン派以降の音楽理論を避ける傾向があります。 12音技法の使われているポピュラー音楽はほぼ聴いたことがないです。…てかあるの…?ってレベル。 モードに関しては、ごく稀にある…かな?一時期海外のポップス分野でも積極的に使われていた時代がありますし。 マイケル・ジャクソンなんかは積極的にモードを取り入れてますね。これはいつか別の機会に解説します。 で、少し話が逸れますが、モードに関しては"意図せずモードの構図になっている"場合が多々あり、 クラブミュージックの分野で時々偶発的に?発生します。まれによくある。 これは同じフレーズを繰り返す、サンプリングを用いる…という性質のクラブミュージックであるがゆえに起こりうる現象です。 これらの例外を除いて、ほかは全て前述の"一般的な音楽理論"で出来ています。 曲を分析したときに、コードの機能があって、それで説明がつく曲…というふうに考えて下さい。 さらにはロマン派までの理論という話でしたが、後期ロマン派のような遠隔転調や あいまいな調性のものもポップスには少ないように思います。 だいたいが古典派~前期ロマン派あたりの理論で成り立っています。 ・音楽理論的に正しいほうがいいの? これに関してはなんとも言えません…。 需要があるものというか、商業的に古典派~ロマン派あたりの技法で作られたものが主流となっている以上、 そうならざるを得ない…というのが一番近いニュアンス。 あるいはここが技術面と商業面の均衡点なのかもしれません。 機能的な和声の理論を拡張して、拡張して、拡張して…を繰り返してできた"一般的な音楽理論"の形。 そしてこれ以上拡張はできないよ!というところで止まったのが100年ほど前。 現在、一般的に耳にする音楽はこの100年前で止まった理論をもとに書かれていますが、 それでも色々なことができるので不便はないように思います。 商業的にもそれで良いとされて、一定のプロセスを経れば誰でも修得でき、簡単に用いることが可能。 その一方で、理論的に正しくあろうとするのは良いのですが、 そうでなくちゃいけないんだ!というのはロマン派に留まる考え方。 つまりは100年前で思考を止めることを意味します。 さらには、様々な国や民族の音楽なんかも含め音楽全体を見たときに 100年前にできた理論体系で書かれた"理論的に正しい音楽"なぞ、ほんのごく一部です。 というより、インドにはインドの、アフリカにはアフリカの音楽の理論があります。 (インドのラーガとかターラとかの話はめっちゃ面白いので興味ある人は調べてね!) さらにさらに。 おなじ和声法ひとつとっても、音大の和声の授業でおなじみの赤・青・緑の藝大和声と言われている本と フランス和声の本とでは、修得方法も内容も得られる結果も違います。 そう考えると、理論的に正しいといっても「どの範囲の話だよ?」と。 そのくらい"一般的な音楽理論"なんてのは狭い範囲でのお話なのです。 ・結局なにがいいたいの? 日本はこう!海外はこう!みたいな話はあんまり好みではないのですが、 ことさら日本国内では規則に対して自分から縛られていく…みたいなところがあるように感じます。 さっきから悪者のように扱っている"一般的な音楽理論"こと100年前に出来上がった音楽理論も、 縛るべきルールとしてではなくメソッドやコンセプトとして考えるのが、より柔軟な考え方かと思います。 理論外の物事に対して排他的に扱うのではなく、上手に既存の自分の考えの中に組み込む…という考え方。 日本人の傾向としてはそういったアップデートのほうが得意なんじゃないかなーと。 ジャズだって、従来の形式に黒人的な感性を上手に融合させて出来上がったわけですし、 現在の音楽理論だってそうやって、少しずつ拡張されていった結果出来上がったものです。 100年前の技術とはいえ、まだまだ成長の余地はあると思います。 というかロマン派までだったりバークリーメソッドの理論の範囲でも 隅々まできちんと修めると、結局のところ何でもアリなことに気がつくはず。 ですので、理論と上手にお付き合いすることが大切。 未知のものをよく知って、観察し、自分なりに消化し、ひねり出す。 ダメなら一度距離をおいてみる。 結局、自分の捉え方ひとつの話なのです。 追記:2017/9/4 結論をボカして書いたために、意図と違うふうに捉えられかねないな…と思ったので追記。 まず、僕が言いたいのは「100年前の技術だ、使うな。勉強しなくていい。」ではなく、 「100年前の技術だろうがなんだろうが、便利なんだから上手に使えばいいじゃん。」と言いたい。 次に、「このルールに則っていなければいけない!」っていうスタンスに対しては 「お前、絶対の信仰のように音楽理論を扱ってるけど、100年前の技術が100年後の現在も常に正しいと思うか?」 と言いたい。 最後に、自分の使っているものについて疑問をもったり、それ以外のものについて考える余裕をもつこと。 ときにこれまでの考え方を大きく変える必要があるよ、と言いたい。 『便利なものはどんどん使え。』 『狭い範囲で便利なだけだ。万能じゃない。』 『範囲外のものに敬意をはらうこと。自分なりに考えてみること。』 めちゃくちゃ偉そうな書き方してしまってますが、たったの3点です。 ただし、この話を"やらない理由"として扱わないでいただきたい。 やってみてダメだったら他の道を探す。それでいいと思います。 追記おわり。 ということでこのお話は〆たいと思います。 ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。 少しでも参考になれば…というより、こんな考え方もあるんだなぁ、程度で考えて戴ければ幸いです。 やはり長文で理論塗れになると最高やで。こんな、変態作家と理論語りしないか。 ああ~~早くアヴォイドノートまみれになろうぜ。 イベント会場であえる奴なら最高や。 音楽理論まみれで語りたいやつ、至急、メールくれや。 ドミナントのまま解決せず、短二度音程だらけでやろうや。

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